365日のシンプルライフ(原題『TAVARATAIVAS』)というフィンランドの映画をレンタルして観たので、ご紹介します。
これ、ミニマリストの方は絶対好きだと思います。
持ち物全てを倉庫に入れるところから物語は始まります。
モノを切り離し人生を見つめ直すための4つのルール
フィンランド・ヘルシンキ在住の26歳ペトリは、失恋を機に、ひとつの「実験」を始めます。ルールは4つ。
・持ちモノ全てを倉庫に預ける
・1日に1個だけ持って来る
・1年間、続ける
・1年間、何も買わない
一旦モノを切り離し「人生で大切なもの」を探すペトリがたどり着いた答えとは?
ドキュメンタリー風味で、淡々と進みますが、心温まる映画です。
生活感のある外国映画が好きな方は好きなんじゃないかな!
ここからあらすじ ※がっつりネタバレです!
3年前まで、ペトリの部屋にはたくさんのモノで溢れていました。
ベッド、机、トランク、楽器、ミラーボール、洗濯物、釣具、鍵や財布やカード、キッチン用品、プレーヤーとレコード、テレビ、日記…
全てをリセットするため、倉庫に荷物を預けたペトリは、ひとり何もない部屋でたたずみます。
そう…全裸で。
あまりの徹底ぶりにこっちもびっくりです。
しかも舞台は極寒のヘルシンキ。
ペトリは、全裸で雪の積もった人気のない夜の町を走りぬけ、さっそく倉庫からコートを取り出します。
その日はコートを寝袋代わりにして眠るのでした。なぜ最初から持っておかなかったのか
実験の日々とモノを取り戻していく喜び
モノがなければないで、工夫して生活を送るペトリ。
パンツをはかずに仕事をしたり、冷蔵庫代わりに二重窓の間に食べ物を入れたり、指で歯を磨いたりと、不便さを感じながらも、ルールは絶対に守ります。
ただ、この話は、決してモノの価値を否定してはいないのです。むしろ、モノを毎日一つ一つ選んでいく度に、ペトリは幸福をかみ締めている。
6日目には「服に身を包むのは気持ちがいい」と喜び、7日目にはマットレスを手に入れ、口付けして眠ります。
「午前0時に倉庫に行けば、今日と明日のモノを一度に持ってこれる」なんて考えてみたり。笑
「毎日1個ずつモノを取り出していく度に、幸福度がどんどん増していく」と気づき、喜びます。
必要なものがわからなくなると、少し倉庫へ行くのはお休みして、メモにほしいものを書き溜めて、まとめて日数分のモノを取り出します。
そして忘れてはいけないのは、ペトリの周りにいる協力者。
弟、友人達、母、そして良き相談役である祖母は、ペトリの実験を理解し、受け入れ、時には助言をし、荷物の出し入れや運搬や修理を、全面的に手伝ってくれます。
もちろんトラブルもあります。
例えば、「携帯電話なしで生活できること」を証明したかったペトリは、仕事以外で電話は使わないと決めます。
が、付き合いの悪くなったペトリを責める友人とメールで口論になったり、メールを使わない両親や友人を排除してしまうことに悩んだりするうちに、やむを得ず4ヶ月で電話を取り戻すことになります。
しかし、カーテンが壊れても、ズボンが破れっぱなしでも、ペトリは楽しく生活を続けます。
「人生で大切なもの」に向き合う
半年が過ぎた頃、自分へのご褒美に愛車を持ち帰るため、ペトリは故郷へ帰ります。
その際、小さな従弟のピックに「一番恋しいものはなに?」と聞かれ、ペトリは実験のきっかけとなった失恋のことを思い出します。
同時に、迷い始めるペトリ。50~60個以降、欲しいものは特にない。この先、どうすればいい?
相談相手の祖母に「人生にはモノ以外の別の何かが必要だ」と言われ、ペトリは改めて自分の生活を前向きに見直すようになります。
そんなある日、女の子との自転車デートが決まったペトリ。
女の子の自転車のロックを外してあげるための工具選びに倉庫で四苦八苦したり、自分の自転車を盗まれたり、デート前夜に洗濯機が壊れたりと、次々とトラブルに遭いますが、アイデアと運と仲間の協力で、なんとかルールを破らずに乗り切ります。
デートは成功し、ペトリはアウトドアの好きな女性、マイヤとお付き合いをすることに。
ペトリはマイヤと幸せな日々を送ります。
しかし、クリスマスを少し先に控えた日のこと、突然マイヤの冷蔵庫が壊れてしまいました。
春までは冷蔵庫を買うことができないマイヤのために、なんとかしてあげたいと奔走するペトリ。
修理屋には修理を断られ、物々交換サービスにも冷蔵庫は出品されていない。
壊れた冷蔵庫を前に、ペトリは「ルールを破ってモノを買うか、無視するか」の選択に迫られます。
ペトリがどのような選択し、どのような結末を迎えるのかは、ぜひ本編を観ていただきたいところですが…
それまでシルエットや声や体の一部しか映らなかったマイヤの顔が、最後の最後で明らかになるのですが、決して絶世の美人ではないけれど、とても優しそうで笑顔が素敵で、これからの二人の幸せを願わずにはいられませんでした。
見所とおばあちゃんの名言
この映画のテーマは、「モノを一旦切り離して、本当に必要なものを一つ一つ考えながら手許に戻していくことで、本当に大切なものがわかってくる」というものです。
最初の何も無い部屋はとてもさっぱりしていて気持ちがいいのですが、ペトリ自身もどこか虚ろです。
終盤にさしかかる頃には、部屋にもモノが増えているのですが、ペトリは本当に幸せそうで、満ち足りた雰囲気です。
「モノを捨てる」過程より、「大事なモノを集めていく」過程こそが大事にされている映画なのかな、と思いました。
それから特筆すべきは、先ほどもいいましたが、飾らないペトリを、愛し、理解する周りの人々の温かさです。
彼ら・彼女らの協力なくしては、この実験は破綻していたでしょう。
中でも、ペトリのおばあちゃんは、いつも助言をくれる大切な存在であり、明言の宝庫です。
“結局モノは(死ぬ時に)全部残していくことになる”
“何が本当に必要なモノかは自分で決めないとね。
節度を身につける方法はそれしかない”
“モノの多さでは幸福は図れない。人生には別のものが必要。モノは小道具にすぎない”
あと何十年も生きたいと笑い、孫の子どもを楽しみにする顔は、「大切なもの」を見つけた人生の先輩の顔でした。
そんなおばあちゃんの部屋は、片付いていますが、殺風景ではない。
終盤、ペトリはおばあちゃんの菓子入れをもらいうけ、「おばあちゃんのモノという感じがする」と呟きます。
おばあちゃんがモノに依存しているのではなく、おばあちゃんの人柄がモノに温度を与えているのだと私は感じました。
モノに向き合う人に観て欲しい映画
『365日のシンプルライフ』は、ミニマリストやシンプルライフを送っている人・目指している人、あふれるモノに悩んでいる人など、モノに向き合う人に一度は観て欲しい映画でした。
フィンランドの暮らしが垣間見えるのも楽しかったですよ。